Hoar Shade

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Card of the Day -今日の1枚- 2015/12/12

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怪談と言えば夏のイメージが強いが、その舞台は冬であることが多いのもまた事実。うだるような熱帯夜より、真冬のロッジなんかの方が死霊・悪霊の類がよく似合う。雪山の夜と言えば吹雪、隔絶されたエリアを自然に作るには、極寒の世界の方が何かと都合が良いのだろう。砂漠に幽霊は似合わないけど、雪山との相性はバッチリだ。

 

そんな、極寒の地に潜む恐怖の存在をカード化したのが《Hoar Shade》。Shade=シェイド=影、《ナントゥーコの影》などが有名な、あのクリーチャータイプである。Shadeは主に木陰などの日が遮られてできる陰を意味するが...他にも日よけ(サングラス)や、「ごくわずか」「(言葉の)あや」「ニュアンス」という名詞や、「暗くする、陰をつける」という動詞「(次第に)変化する」という自動詞などで用いられることもある、意味の広い言葉だ。そして、この単語は同じく「亡霊・幽霊」「死者の世界」なども意味する。シェイドの名を冠するカードは皆、陰より生れ出たような姿の亡霊的クリーチャーで、そのサイズを徐々に大きくする起動型能力を持っている黒のクリーチャーで、この単語に何ともぴったりな存在である。その亡霊群で、唯一日本語名を持っていないカードが、冒頭でも述べたような雪山の亡霊《Hoar Shade》。Hoarは霜が降ったかのように白い髭などを表現する、なかなか耳にしないし口にもしなさそうな単語である。「霜降りた影」なんかがカッコイイ訳になるだろうか。「霜降りの影」だったら美味しそうだが、実際には緑のしわくちゃのゾンビ系。この、他のマジックのカードには余り見られないドアップな構図と、版画チックな色彩。うーん素晴らしい!今のCGゴリゴリのリアルなイラストも迫力があって素晴らしいけど、この手作り感が初期マジックの魅力。「バタリアン」や「死霊のはらわた」、あるいはアイアンメイデンのアルバムなどのカバーイラストに見える、絶妙に不気味でどこかポップな作品は一日眺めても飽きないだろう。原画が欲しいな...。

 

カードとしては、ザ・シェイド。初代シェイド《凍てつく影》の兄貴分とでも言おうか、4マナで1/2、黒マナ1つでパンプアップ。黒単デッキでこれを素で唱えられているということは、次のターンから5/6でしかけていくことが出来る。...のだが、そこまで払うと以後の展開が阻害されてしまうので、そうそう起動させることはないだろう。こういうカードは、実際に起動しなくても「起動できる」能力を持っていることに意味がある。この能力が見えているからこそ、対戦相手はおいそれとはブロックしてこないだろうし、立てられているとアタックにも生きづらい。それを活かして、戦場をコントロールしてゆくのだ。

 

まあ現代マジックの基準で見れば貧相なクリーチャーである。まさしく古き時代の亡霊として、今後も生まれてくる後輩を見守り続けることだろう。全く同じデザインで名前違いに《臭鬼》がいる。どちらも緑の皮膚のゾンビ系というのも面白い。


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